SaaSの利用が拡がるにつれて、企業は特定ベンダーのサービスをまとめて利用する(Suites)か、最適サービスを組み合わせて利用する(Best-of-Breed)か、悩むことになります。SuitesとBest-of-Breedそれぞれのメリットとデメリット、今後どのような選択を行なっていくのが良いのかご紹介したいと思います。
■SuitesとBest-of-Breedの動向
SaaSの普及で先行した電子メールやオンラインストレージなどのコミュニケーション系サービスやデジタルマーケティング関連サービスは当初それぞれのベンダーが提供するサービスを個別に契約する形で利用されてきました(Best-of-Breed)。
SaaSの利用が進むにつれて大手ITベンダーは、自社開発に加えてM&Aなどを通して自社サービスのポートフォリオ拡充を進め、それら機能をまとめて展開する動きを強化しています(Suites)。
Suitesの採用により1社のサービスにまとめる動きが進んできたものの、近年は再び複数のSaaSを組み合わせて利用する動きも増えています。
■Suites vs Best-of-Breedの比較
SuitesとBest-of-Breedそれぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
Suites | Best-of-Breed | |
---|---|---|
メリット | ・契約の一本化と管理の一元化 ・連携を前提とした設計 ・段階的な拡張と全社展開の容易さ | ・最も優れたサービスを使える ・最新のサービスを利用可能 ・ベンダーロックインを回避できる |
デメリット | ・サービス品質のバラツキが出ることも ・コンセプトの違うポートフォリオ拡充 | ・連携がベンダー次第 ・個別契約となる(費用/管理負担増など) |
■市場調査に見るお客様の状況
HENNGEは2020年8月にMicrosoft 365ユーザー、G Suiteユーザーに社内で利用するSaaSに関する調査を実施しています。
この調査によると、Microsoft 365、G Suite利用企業は、それ自体が様々なコラボレーション機能を有するにも関わらず、同等の機能を有するSaaS(Zoom, Slack, Box, LINE WORKSなど)を並行して利用している企業が一定数いることがわかります。
同じようなサービスを利用する理由を伺ったところ、下記の理由が上位になりました。
- 使いやすいサービスを利用したい
- 都度コスト比較をして最適なサービスを選択できる
- 社内で推奨サービスを指定してもユーザー部門が使いやすいサービスを独自で利用している
■まとめ
オンプレミスシステム時代の名残でSaaS導入の検討を行う際にも5年〜7年といったリプレイスサイクルを意識して検討する企業が依然として多く見られます。しかし、SaaSの良さは導入や全社展開の容易さです。また、データのエクスポート機能はサービス連携の強化に合わせて提供されており、データ移行も比較的容易に実現可能になりました。
SuitesなのかBest-of-Breedなのか悩む前に、両方導入してテストを行うことも一考だと思います。様々なサービスを並行して利用しながら、ユーザー部門に支持されたサービスのみ継続して利用していくというスタイルが実際の業務効率化や働き方改革を実現するのに適しているのではないでしょうか。