グローバル化が進む職場環境における異国・異文化間でのミスコミュニケーションの原因をどう理解し、解消していくのか。世界中のビジネスパーソンから指南書として熱狂的に支持されている 『異文化理解力』の著者エリン・メイヤー氏。 HENNGEは彼女に直接、インタビューする機会を得ました。
多国籍な才能あるメンバーが集い、グローバルな職場環境下でパフォーマンスを発揮する社員たちが実際に感じているビジネスコミュニケーション上の疑問や迷いを、HENNGEのマネジメントを務める宮本と人事部門を担当する細山田が、異文化コミュニケーションのプロフェッショナルに直接質問。ここでしか聞けない、生の”異文化理解ソリューション”をライブでお届けします。
ありがとうございます。目の前の資料を少し見ただけで非常に面白い会社であることがわかります。若いIT系企業の典型的な特徴がカルチャーマップに表れていますね。
弊社は1996年に創業し、2014年まではほぼ日本人のみで占められていました。 2014年から外国籍のスタッフの採用を開始し、現在は23名の外国籍スタッフが勤務しています。
日本人が一番多く177名、次がインドネシアで、タイ、マレーシア、中国、ミャンマー、アメリカ、コロンビア、スイス、韓国と10ヶ国のスタッフがいます。
彼らは海外で採用して呼び寄せたのですか? それとも日本で採用したのですか?
海外で採用されたスタッフもいれば、すでに留学生として日本在住だった方を採用したパターンもあります。
『異文化理解力』に従って、それぞれの指標にHENNGEのコーポレートカルチャーを分析してみましたので個別にご紹介させてください。
楽しみです。私の言葉で”Who are you ?”と表現しますが、自己分析に似たプロセスですよね。
まずコミュニケーションの指標については、社員に日本人をはじめ、アジア諸国のスタッフが多いからだと思いますが、ハイコンテクストに寄っています。 評価の指標では、この辺ですね。 説得の指標は、原理主義と応用・実務主義の中間あたり、リーダーシップについては日系企業でありながら、かなり平等主義寄りの評価となっています。
まさにこの業界の特徴が表れていますね。 IT系の企業は平等主義の分布を示すことが多いです。
なるほど。
この業界においてはそれが理想的なリーダーシップのあり方なのかもしれませんね。御社においても創設者の方々がそういったフラットで平等主義な環境を作りたいのではないですか。
まさにその通りです。オープンソースを扱う文化ですから、平等主義の労働環境が心地よく最適だと思います。
① HENNGEの社風に近い国はスウェーデン?
さて、今回4つ質問を用意してきましたので順番に伺っていきたいと思います。 まず、私たちのような日本的なスタイルだけれどもリーダーシップにおいては平等主義的な組織、企業は世界の他の地域にみられますか?
そうですね、企業ではないですが、最も近いのではないかと最初に頭に浮かんだ国はスウェーデンです。
スウェーデンですか!
スウェーデンと日本を比較した時に、決断、直線的なスケジューリングという指標において二国は非常に近い位置にありますね。どちらも合意主義的です。
見解の相違の伝え方についても、他の西洋諸国と比較するとスウェーデンは最もアジア寄りのアプローチをとるといえるでしょう。
また沈黙についての感覚というのも、日本人が沈黙を不快と思わないのと同様に、スウェーデン人も似たような感覚を持っています。
ただスウェーデンはネガティブなフィードバックについてはより率直にダイレクトに伝える傾向があります。カルチャーマップでも日本と離れた位置にありますね。
なるほど、そこは違いますね。
このように述べた上で、日本というのは非常に独特な文化をもっていることを強調したいと思います。正直日本と同じ分布図を示す国は他に見られないのです。つまり日本的なスタイルを基本としながら、平等主義という特異性を示すのは御社だけではないですか?(笑)
次の質問に移る前に、もし何か社内で苦戦していることや課題と思われる部分があれば教えていただけませんか?
そうですね、例えばリーダーシップについてですが、マネージャーによって管理スタイルが違うことによって、多文化の現場では誤解が生じやすいことでしょうか。 グローバルなチーム構成をまとめて統一感をもち、平等主義の方向に移行してはおりますが。
わかります。難しいと思います。
なぜなら社員構成はアジア諸国が中心です。彼らは階層主義の下で働くことに慣れている文化です。
はい。さらにハイコンテクストの文化もまた状況を難しくしていると思います。
ハイコンテクストの文化同士というのは、誤解し合うことが多々あります。
問題がもし隠れていたとしても、目立ちにくいこともあります。
ハイコンテクストの文化をもつ人同士、暗黙の了解や空気を読むということをするなかで、異なる文化同士の場合は間違ったメッセージを受け取ってしまうということがよくあります。
② カルチャーマップからわかるHENNGEの未来とは?
私たちは今後もグローバルな採用活動を続けていきたいと考えていますが、HENNGEの将来像についてどのように予測されますか?
予測ですか?大成功して裕福になっているでしょう!(笑)
ありがとうございます(笑)
今後どのようなことが起こり得るか、また備えるべきことや注意点があれば伺いたいと思います。
そうですね、今後もアジア諸国を中心に採用しますか?それとも西洋諸国からも採用を増やしていきますか?
アジア諸国に限らず、他の国へも採用を広げていきたいという考えはありますが、 おそらくアジア諸国の方が自然と集まる機会が多いのではないかと思います。
予測ですよね。国際的な展開を継続し、さらに進めていく場合、おそらく最もリスクとなり得るのは日本的なカルチャーが強い部分。
見てください、カルチャーマップの中で、コミュニケーション、評価、信頼の指標において御社はかなり日本的な要素が強いですね。
たしかに。
これまでのように、アジア諸国を中心にスタッフを採用するぶんにはこの状況は心地良いものだと言えます。 しかし、今後西洋諸国の採用を増やすのであれば、これらの地域の人にとって日本の文化はあまりにも直接口に出さないコミュニケーションが多すぎるのです。
ありがちな例としては、あなた方が積極的にコミュニケーションを図っていると思っていることが、対極に位置する文化の人間から見ると、秘密主義的だったり、何か隠しているのではないかと疑念を抱かせてしまうことがあります。
それは彼らが空気を読み、口に出されないメッセージを受け取ることが出来ないからです。そのような場合、信頼性に影響を与えることがあり得るでしょう。 意図的に情報を共有しないのではないかと取られることもよくあります。
そんなつもりはないのに、そうなってしまうこと、ありそうですね。
評価の指標を見てください。これも欧米諸国の人にとっては難しい部分です。
日本ではネガティブなフィードバックについてはっきり伝える文化がありませんね。
フィードバックがあったとしても、かなりオブラートに包んだ言い方をするでしょう。
欧米諸国のほとんど、インドもそうですが、対極に位置する文化の人々にとっては全く意味不明ということになります。
仕事における評価を理解できないという問題が生じます。
そして、次の項目です。私はこれが一番大切だと思うのが、信頼の指標です。
国際的な成長を続ける際に重要なキーとなる指標だからです。
日本人はよく終業後に食事や飲みに行くなど会社外でも一緒に時間を過ごしますね。
そうすると日本人同士は強固な信頼関係を築きやすいのですが、一方で他の文化の人間はその輪の中に入れずに同程度の信頼関係を築けないことがあります。
疎外感を味わうこともあるでしょう。
ですから、まず一つお勧めするのは御社のブレイクダウンしたカルチャーマップを描いてみてください。HENNGEのカルチャーマップを書き出してください。そして理想の方向性、企業文化の目指す姿としての位置もカルチャーマップ上に示してください。
ぜひやってみたいですね。
次に大事なことですが、人事部はこれを積極的に活用することを習慣にしてください。
例えば新入社員が加わった際には、このカルチャーマップを使用して御社の企業文化について話す機会を積極的に作ります。
HENNGEの文化とはどういうものなのか、このカルチャーマップは何を意味するのかを。
これは非常に大切なことです。
そして、先ほどの指標の中でも指摘しましたが、コミュニケーション、評価、信頼の指標は会社としてもう少し取り組みを強化し将来的に変える必要がある部分でしょう。
特に今よりも広い範囲の文化圏から採用が増えた場合に、課題となってくるからです。
そうですね。
例えば、タイ人のスタッフとインドネシア人のスタッフは共にハイコンテクストの文化ですね。
ただ、お互い受け取るメッセージは同じとは限りませんから誤解が生じることはあるでしょう。
しかしながら、二国とも間接的な表現で不快感を示すため、はたから見るとこのスタッフ同士が不満を抱えているとは分からないかもしれません。
しかし、国際化がより進んでいくと、このうまく収まっていた状況が一気に崩れてしまうということも起こり得るのです。
具体的にはどういったアクションが有効でしょうか。
リーダーとして、明快な表現をすべき状況について考えてみてはいかがでしょうか?
ハイコンテクストの文化のなかで、隠れたメッセージというのは意識的に隠しているわけではないので、まずはそれを意識する必要があります。感覚で分かり合えてしまうことを明確に意識し確認するということですね。
③ 日本らしい「ハイコンテクスト文化」はビジネスにどのような影響を与えるのか
私自身にとってはハイコンテクストなコミュニケーションは自然で快適なものです。
例えば、新しいスタッフに10を説明せずとも2-3説明をした段階で大体のことが伝わるという、分かり合える心地よさがあります。
ですから日本人同士の間では心地良さに甘えてしまいがちです。
言うならば、毒入りのお菓子というか、甘い誘惑です。
うまい例えですね(笑)
しかし、私自身はローコンテクストな方向に変化する覚悟を決めたいと考えています。
具体的にはどういう場面でこのように考えますか?
仕事の指示を出す場面でしょうか?
そうですね。
どの地域の方と仕事をするかにもよりますが、まずリーダーシップの指標をみてみましょう。
例えばインドネシアやタイのスタッフが加わったとしましょう。
彼らはかなり階層主義寄りに位置しています。
ですから上司から細かく指示を出されることに違和感がありません。
また空気を読むことも好みます。
平等主義のカルチャーでは、いちいち細かい指示を出されることを好みません。
自分自身で考え取り組みたいという主義です。ですから私がすすめるのは、上に立つものとしてあなたがするべきは方向性をはっきりと示すこと、状況をクリアに説明した上で方向性を明確にして理解させること。
この人に電話をして、メールを送って、このようなレポートを仕上げてという具体的な指示を出すのではなく、取引先についての情報を十分に与え、現在の状況やそこに至った背景、目的、包括的な戦略、何を達成したいのかというものを明確に示すのです。
なるほど。とても理想的ですが、とても高レベルなコミュニケーション能力が求められますね。
これは時間を要することです。ミーティングの最後には、時間をとり決定事項やアクションの責任の所在をはっきりさせるのが大切です。時間もエネルギーも必要ですが、とても重要な部分です。
日本のミーティングの様子を見ていて思うのが、最後に特に確認し合わなくとも、誰が何をするかというのを全員が理解しているという不思議な状況があるということです。ただこれが異文化で構成されるチームの場合は、確認作業をシステム化することが大切です。日本人はシステムを作るのが大変上手ですから、このシステムは甘い毒入りのお菓子ではなく、酸っぱい未熟の梨のようなものですね。
④ 多文化なグローバル企業で求められる社内教育とは
私たちの組織のなかには、多文化なバックグラウンドや国際経験が豊かなスタッフも多くいます。
著書の中で、そのようなスタッフを組織の中のカルチャーギャップを埋める架け橋として、また他のメンバーが柔軟な思考を身につけられるような手助けを担えるよう、教育し活用していくということを述べられていました。
具体的に人事部としてどのような取り組みをしていけばよいでしょうか?
具体的な指示や援助無しに、これらのスタッフが有効な架け橋になることはないでしょう。多文化のバックグラウンドをもつスタッフがいるというだけでは架け橋にはなりませんね。
そこで、とてもシンプルかつ有効な取り組みをお勧めします。これまでいくつもの企業が実践しているものですが、『異文化理解力』を用いブッククラブを実施するのです。
“ブッククラブ”、興味深いですね。何人程度でどのように行うものなのでしょうか?
そうですね、15人くらいでしょうか。様々な国籍から選ぶようにしてください。もちろん国際経験が豊かな日本人も5名程度含めることも忘れずに。例えば彼らに月に一度、定期的にこの本を読み集まって意見交換をしてもらいます。ランチを囲みながらでもいいでしょう。
内容について納得できたか、自国の文化と日本、あるいは他国の違いついて。
社員同士のいい交流になりそうです。 ディスカッション終了後、私たちがやるべきことがあれば教えていただきたいです。
セッション終了後、スタッフに問いかけてみるのです。会社の中で異文化間の理解が深まるよう、サポート役となる責任を感じるかどうか。
例えば何人かを選択し、あなた方は”多文化間メンタープログラム” について学びましたので、この会社の中で異なる文化のスタッフに対し、より深い理解をもてるようサポートする役割を担っているのですと。さらに、定期的に集まり会話を続けることをシステム化するのです。
また採用活動の際にもこれらの知識やシステムは活用できます。インターナショナルなバックグラウンドを持つスタッフに対しては、採用の理由の一つとして、はっきりとこの組織の中で文化的に柔軟な思考の持ち主として他のスタッフをサポートして欲しいことが挙げられると伝えるのです。
仮に新たに採用するスタッフのなかに、初めてドイツ、サウジアラビアから採用された人がいたとするなら、そのスタッフにこの本を読んでもらい入社後2ヶ月間程定期的にミーティングの機会を設け、それぞれのチャプターについて感想を述べてもらったり、自国と日本の違い、気づきなどを話してもらうこともいいでしょう。 その過程で異文化環境の中で働く心構えも出来ていくと思います。
また次の段階として日本人のスタッフからも同様に数名選んでディスカッションに参加してもらうことを考えましょう。彼らの意識をも向上させることができます。
そうですね。プログラムのシステム化は必要だと思います。多文化間メンタープログラムについて理解のある社員が増えることは私たちにとってとても有益なことです。
また採用活動や新人研修の場でこのプログラムを取り入れることも良いアイデアだと思います。
ぜひこのような活動や努力を続けてください。
会話の重要性は強調してもしすぎることはありません。継続してできるだけ多くディスカッションの機会を作ってください。それが働きやすい環境作り、また状況の改善に大きく役立ってくれるでしょう。
人は簡単に口を閉ざしてしまいがちなのです。 言葉の壁や、批判的に聞こえるのを恐れてはっきり話すことが正しくないと感じる意識など、沈黙の罠に陥るのは簡単です。
シンプルですが、私が提案するのは会話、会話、ひたすら会話です。
他の日本企業で似たような質問をされたことはありますか?
ハイコンテクスト、ローコンテクストは日本人に関してはよくある質問です。
日本人は説明しなくてもわかりあえる状況に慣れているからです。
空気を読むですね。
その通りです。 日本は単一民族国家といえるでしょう。私から見ても本当に特殊な国です。人口の97%が日本人。先ほども出ましたが、甘い誘惑ですね、言葉にしなくても理解してもらえることに甘えてしまいがちです。 ですから、日本企業からは逆にこのような質問は少ないですが、その他の多くが抱える問題です 。
例えば、先週私はスカイプでGoogle社のブッククラブミーティングに参加しましたが、彼らは今このプロジェクトを進めている過程にあり、多国籍な構成をもつ自社のカルチャーマップを図式化し、どのようにディスカッションを開始しようかと思案中です。
コーポレートカルチャーを目に見える形で図式化することによって、抱える問題点に気づいたり、あるいは強みとして発展させていく部分が見えたりするのです。
お互いに同じプロジェクトを遂行するにあたってそれぞれのカルチャーを可視化することはとても重要ですね。
また現在の位置がここだとして、他地域のスタッフがさらに加わることによってそのカルチャーの分布図はまた変化しますし、その際自分たちのスタイルをローコンテストに無理やりシフトする必要はないと思います。
その代わりに、より多くの時間を決定事項やプロセスの確認に費やし、書き出し、各自が理解したこと、現場で起きていることの正しい理解をまた確認しという繰り返しの作業に費やすべきです。時間もエネルギーも消費することですが、これこそが、多文化間でのインタラクションをうまく機能させる秘訣です。
そうですね、これもディスカッションが必要な部分です。現在のカルチャーマップの位置付けをはっきり示し、そして将来目指す理想の位置も同様に図式化し、どのように企業文化を変えていきたいのか、会社のリーダーとして、人事部門として、あなた方二人は会社が変わるべき新たな方向性について明確なイメージを持ち、それをきちんと表現できることが大切です。
会社としての価値観を示すと同時に、さらには具体的な行動まで落とし込み提示するのです。
例えば、階層主義の傾向が強い地域出身のマネージャーに、平等なリーダーシップのスタイルを促す必要がある場合、マネージャーだけではなく彼の下で働くスタッフにも同様に平等主義を理解させ教育する必要があります。
彼ら自身も階層主義的なトップダウンのスタイルに心地よさを感じていることもあるでしょうから、自分たちの企業文化は、 上司に対しても異なる意見をはっきりと述べることができる環境を奨励することを一貫して示し、またマネージャーに対しては積極的に自分の意見と異なるものを吸い上げる努力をするように指導するべきです。これは簡単なことではないですね。
⑤ 社内コミュニケーションにおける文化の壁
若手の外国籍のスタッフから、社員旅行を企画しようという声が上がります。日本ですと近年はパワハラやセクハラという問題も懸念されますし、あまり良いイメージはなく積極的にはなれないのです。考え方の違いを感じます。
ここでまた信頼の指標のマップを見ていただきたいのですが、日本は他のアジア諸国の中ではもっともタスクベース寄りです。一方で、タイやインドネシア、ミャンマーなど東南アジアのほとんどの国が、日本と比較した場合極端に関係ベースでの信頼構築に寄っているのがわかりますね。これらの国ではパーソナルな結びつきを大切にします。職場においても、食事を共にし、お互いの家族のことを共有し、個人としてお互いを知ろうと努力するのです。
日本は昼間会社ではタスクベースの考え方をし、終業後に食事にでかけたりするのではないですか?
実はあまり職場外で一緒に過ごすということはしません。
なるほど。あなた方はIT企業の特徴でもありますが、よりタスクベース側に位置しているのですね。そうすると、他のアジア諸国との間にどれだけの距離があることか。
個人的には、これらの地域のスタッフとの間に強い信頼関係を築くことはとても重要だと思います。
多文化の職場環境において、心からの強い信頼関係があれば、もし誤解が生じたとしても許しあえるのです。 タスクベースの働き方に頑なに執着し、スタッフの家族について何も知らず、どういう人間なのか気にもとめず、一緒に笑ったり泣いたりすることもなく、お酒を酌み交わすこともなく、そしてミーティングの時には情報を十分に共有してもらえないと感じたら、きっと個人的に疎外されていると捉えてしまうこともあると思います。
社員旅行をする必要はないと思いますが、そのような声があがるということは、より職場の人たちを理解したいという気持ちの表れでしょう。
ですから、社員旅行に代わる何か、パーソナルな良い関係を築けるものを奨励するのはどうですか?時には少し長めのランチを一緒にとることを奨励したり、昔ながらの日本のスタイルで終業後に飲み会を企画するのも時にはいいと思いますよ。きっとこれらアジア諸国のメンバーたちからのより強い信頼を得られると思いますよ。
⑥ 企業の英語の公用語化について
私たちは2年前から英語公用化を実施しているのですが、これは企業文化にも影響を与えるのでしょうか?
そうですね、日本人同士が英語で話すよう強制するのはあまりお勧めしません。多くのミスコミュニケーションを生み本末転倒になり得るからです。細やかな表現といった部分で母国語に勝るものはないですから。 しかし、多国籍なメンバーでのミーティングなど必要な場合は、ローコンテクストなプロセスが必要ですね。
そして繰り返しになりますが、何度も確認する、決定事項を書き出す、状況を明確に共有するという作業に注力することです。提案できることといえば、このようなことですね。これ以上あまり思い当たりません。実際に御社の取り組みは大変よいと思いますし、このインタビューに先立って他のフロアでスタッフの働く様子も拝見しましたが、英語公用化をうまく導入しているように思いました。
⑦ 日本ならではの給与体制について
最後の質問です。ボーナス制度についてなのですが、日本の会社は基本の給与に加えてボーナスを設けるのが通常の制度です。これは日本特有の文化ですか?少し個人的に不思議に思っただけなのですが。
日本では全員ボーナスをもらうのですか?
正社員であれば、通常はあります。
そうですね、文化的なものと言えると思います。ボーナスがない国もあれば、ボーナスを普通と捉える文化もあり、10%の人だけがボーナスをもらう文化もあります。ボーナスは実績・評価によって変わりますか?
変わりません。
そこが問題かもしれません。通常多くの国ではボーナスは不確定なもので、ボーナスはもらえるかもしれないし、もらえないかもしれないというものですよね。 ですから日本は特殊な文化といえるのですが、もし明快に説明することに抵抗がないのでしたら、これはボーナスですからあなたは受け取る権利がありますと説明し、この特殊なシステムに慣れてもらうしかないですよね。ただ、特殊であるが故に簡単に受け入れてもらうのは容易ではないとおもいますが。
最後にもう一つだけ重ねて言いたいことがあります。今のこのような問題も社内でディスカッションしてみたら良いと思います。どんどん質問してください。 例えば、あなたの国ではボーナスはどんなシステムになっているの?など率直に会話することをお勧めします。そのためには、やはりより良い信頼関係が育まれていることが大切ですよね。オープンになれますから。
日本人は従来関係ベースで信頼を構築する側にいたはずです。ただ新たな世代は反対側にシフトしてきていますね。日本人は昼間は仕事にしっかり集中し、終業後に関係を築いていたのです。
しかし現代はその習慣が薄れているんですね。そんな中、多くのアジア諸国のスタッフたちはきっと職場でのパーソナルな関係の希薄さを感じていると思います。あなた方二人は、若いスタッフたちの祖父母のように振舞って古き良きスタイルを奨励する役目を担ってください(笑)。
本当に日本の企業文化をよくご存知ですね(笑)。さて、残念ながら時間になってしまいました。 今日は貴重なお話をありがとうございました。
ありがとうございます。私もお目にかかれて光栄でした。 これからみなさんが経験するエキサイティングなプロセスが上手くいくよう祈っています。
最後に御社の将来を予測しますね。大成功を収めること間違いなしでしょう。
本日はお忙しい中ありがとうございます。 『異文化理解力』を拝読致しまして沢山伺いたいことがあるのですが、まずは私たちの会社について説明させてください。