HENNGEではGoogle社が提供するSaaS「G Suite」を利用するユーザー企業の情報システム部門担当者の方々にお集まりいただき、「G Suite」を利用して実感する導入効果や課題に関してお聞きするワークショップを開催しました。ワークショップ内で議論された「G Suite」を利用してわかった効果や課題点などをご紹介します。
− 「G Suite」を利用し始めたことで大きく変わったことはありますか
社内での「情報共有」に対する意識が大きく変わった点が最も大きな変化だと感じています。「G Suite」では情報共有を促進するツールと機能が提供されているので自然と情報を共有しようとする意識が芽生えるようです。
利用するツールによってさまざまな情報を共有することが可能な点も意識の変化につながっているのではないかと思います。利用している部署や社員によって共有したい情報は異なりますから、特定の情報だけ共有できるツールだとここまで変化は起きなかったのではないかと思います。
− 具体的にどのような「情報共有」が行われているのですか
Gmailでのメールによる情報共有はもちろんのこと、「Hangout Chat」によるチャットでのやり取りが増えました。それまではメールを利用してやり取りを行なっていたのをチャットによってやり取りすることで効率化が進んでいます。これまでチャットを使うといった文化が無かったのですが、「G Suite」を契約するだけでチャットを利用する環境が整ったこともあり自然とチャットに触れる機会が増え、利便性を認識した社員が多かったようです。メールの代替だけではなく、これまで紙のメモを利用して伝言を残していた情報をチャットで伝言を残す使い方も増えています。確実に対象者に連絡が伝わりますし、結果としてペーパーレス化や資源節約につながったといった副次的な効果も出てきています。
「Google Drive」を利用した情報共有も進んでいます。ファイルサーバーなどでこれまでもファイル共有は行なってきましたが、ファイル単位やユーザー単位など個別に共有設定が可能になったことや端末や場所に捉われずにアクセスできるようになったことでより共有しやすくなっています。また、取引先にIDを付与することで社内だけではなく社外の人とも共有できるようにすることでファイル共有や進捗管理などの情報共有も迅速に行えるようになっています。
「Googleスプレッドシート」を利用した情報共有も浸透してきました。リアルタイムで共同編集が可能であることからそれぞれが作業を行いながら確認をすることができる点も非常に便利なようです。
また、「Googleフォーム」が非常に役立っています。社内アンケートなどでも利用されていますが、お客様からの問い合わせなどを「Googleフォーム」で入力して「Googleスプレッドシート」へ集計結果をまとめることで担当者にすぐに共有するといった形で業務での利用も広がっています。これまではそれらを手作業で集計することも多かったので担当者が状況を把握するのに時間がかかっていましたが、「Googleフォーム」を利用することで情報共有の効率化が実現できています。「Googleフォーム」を使って出退勤の入力を行い、その情報を「Googleカレンダー」と連携させて勤怠管理をする使い方もできています。
「Googleカレンダー」で会議室などの施設管理も行えるので会議室の空き状況や誰が会議室を利用/予約しているのかといった情報共有も実施できています。これまでは担当に直接確認する必要があったのが自分ですぐに確認できるのでとても便利になりました。
− 「G Suite」で提供されているツールが「情報共有」に役立っているのがわかりますね。実際に利用している社員からはどのような意見があがっていますか
場所や端末を問わずに作業できる点を評価する声が多く聞かれます。パソコンだけではなくスマートフォンやタブレット端末から利用することが可能なので、その場で最適な端末を選んですぐに利用できることが仕事の効率化につながっているようです。
迷惑メールフィルターによって迷惑メールが除かれることや予測変換によるアドレス入力ミスが減っていることも喜ばれています。それと、ファイルの添付忘れのアラート機能も評判がいいです。文面から添付忘れがないかを推測して表示してくれるのですが、再送信しなければならない手間がなくなることが評価されています。
検索機能への評価も聞きます。探しているメールやファイルを検索によってすぐに見つけ出せるため、見つけ出すために使っていた時間を短縮できているようです。また、細かいフォルダ分けなどで検索性を高めていた社員もいましたが、そのような作業を行わなくても検索することで見つけることができることも作業効率化につながると感じています。どうしても分類を行いたい場合はラベルを利用することで管理もできるので必要に応じて分類を行なっている社員もいるようです。
− それでは、導入を行なった側の情報システム部門として感じる導入効果はどのようなものがありますか
クラウドサービスへ移行したことでこれまで管理していたメールサーバーやファイルサーバーなど物理サーバーの保守運用に関わる作業負担が減ったことがまず大きい効果として挙げられます。また、「Googleドライブ」でファイル管理を行なったりバックアップを取ったりするようになったことでパソコン交換などの作業が迅速に行えるようになった点も導入効果として感じます。これまではサーバーやパソコンの交換をするためにバックアップ作業などが発生していたため時間と手間がかかっていたので大変助かっています。
容量無制限のプランを利用することでデータ容量を気にする時間や手間が減ったことも導入効果になります。ドキュメントなどの電子データに加え、画像や動画など容量の大きいデータを取り扱う機会も増えてきたことで物理サーバーでの運用は投資面でも作業面でも負担になってきていたので、それらを解決できたことは大変助かっているのです。
「G Suite」で提供されているツールがコンシューマー向けでも提供されている点が情報システム部門としては助かっている面もあります。コンシューマー向けサービスをプライベートで利用している社員も多く、使い方を改めて教育しなくてすむためです。特に若手社員は使い方を知っているだけでなく、使い方を自分で調べて利用したり他社員に使い方を教えたりしてくれるため、負担軽減につながっているのです。
「G Suite」以外で利用しているクラウドサービスとの連携が行いやすい点も情報システム部門としては助かっています。「G Suite」向けに提供されているクラウドサービスはもちろん、「Slack」など他クラウドサービスとも連携が取りやすいことからクラウドサービスを組み合わせて利用したいという社員のニーズに応えられています。
− 社員にとっても情報システム部門にとっても「G Suite」の導入効果が出ているようですね。逆に導入してから感じた課題はありますか
ツールの利用が進むことで導入効果が出ている企業がいる反面、ツールの利用自体がなかなか進まずに導入効果が実感できていない企業もいます。「Gmail」「Googleドライブ」など業務上必要なツールの利用は進むのですが、それ以外のツールの利用率が上がらない問題が出ています。多いのが「Hangout chat」の利用が進まないケースのように、これまで利用したことがない領域のツールが普及しないことが多いです。
また、これまで利用してきたツールから変えることを敬遠する社員がいることで普及が進まないケースもあります。例えば、「Googleスプレッドシート」を利用した情報共有や共同編集による効率化の事例を見聞きして社内での普及を進めようと考えているのですが、Officeツール(Excel)に慣れていることもあってOfficeツールへのこだわりが強い社員も多く、「Googleスプレッドシート」を利用しようとしてくれません。
− 管理面から感じる課題はありますか
ツールの利用面にも関係するのですが、「アップデートが頻繁にあること」「UIの大幅な変更があること」は管理する立場として困ることがあります。機能追加やUI変更に関する説明を社員にしなければならないのですが、詳細な情報を収集するための作業が発生してしまいます。Google社のブログやQ&Aなど情報提供もあるのですが、細かな情報までは載っていないことも多いので実際に触ったり、インターネット上で情報収集を行ったりして情報を集めなければならないこともあります。また、管理コンソールのUIが変わることもあるため情報システム部門側でも作業が発生するなど、アップデートによるユーザーサポートへの負担とサポートが追いつかないこともあるという問題が出ています。
「Googleドライブ」におけるファイル共有の場面で発生することが多い問題になるのですが、アクセス権限の管理が難しい面があります。人によってアクセス権限の付与方法が異なるため、どのような形でどのファイルが誰と共有されているのかを把握することが難しいです。共有フォルダが乱立していたり、そもそも共有ファイルが整理されていなかったりすることがあります。社内だけではなく社外とのファイル共有を行なっている会社では特に情報漏洩などへの対策を取りたいのですが、きちんと対策が取られているのかを監視することが難しい面があります。
また、休職者や退職者がオーナー権限で作成したファイルの管理も課題となることがあります。特に退職者のID削除に合わせて権限移行などを行なっていないとファイルが消去されることもあるため、ユーザーIDごとのデータ管理をきちんとしておかないと大変なことになるのです。
− 最後に「G Suite」をこれから利用する方へアドバイスがあれば教えて下さい
「G Suite」を利用することで導入効果は提供されているツールを使い込んでいる企業が実感できていると思います。メールやファイルサーバーとしての使い方だけでも導入効果は一定程度感じることはできますが、「情報共有」の実現や作業効率を高めることができるのには他のツールも使うことが必要だと思います。事業部門側が自発的に利用してくれるのが理想ではありますが、社内通達や問い合わせ対応などの業務を通して自然と利用する機会を作っていくなどツールに触れ合う機会を作るのがいいのではないでしょうか。
それに合わせて、利用時のルール作りを早い段階で行うのがいいと思います。課題としてあげたアクセス権限管理のように、使い込む前に対応が必要なことはルール化しておくことで利用者側も管理側も利用しやすい環境を作れると思います。アクセスできる端末やネットワークをどうするのか、Google Apps Scriptなどを利用したカスタマイズの許可や管理方法、ファイルの整理方法など検討することは多いですが、社内の状況に合わせてツールの利用促進と合わせて整理しておくことが成功につながると思います。