SaaSがもたらす企業の変化

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SaaSやサブスクリプションという言葉をニュースで目にする機会が増えています。企業でSaaSというと、Microsoft Office 365、Google G Suite、Salesforce、Slackなどがイメージしやすいのではないでしょうか。サービスベンダーが構築したアプリケーションの機能をネットワークを通じて企業が利用するサービスです。なぜSaaSが注目されるのか?その仕組みをご紹介します。


SaaSの市場規模

 総務省「平成30年版情報通信白書」によれば、2017年の世界におけるSaaS市場規模は617.7億ドルと、2014年から2倍以上の金額規模にまで拡大しています。2020年には905.9億ドルにまで拡大すると予測され、企業でのSaaS活用が今後も広がっていくと予想されています。

SaaSの導入が拡がる理由

 SaaSを企業が導入するメリットをまとめてみました。

◼️所有から利用へ

これまで主流であったオンプレミスシステムでは企業は機器やソフトウェアを購入する必要がありました。 SaaSはサービスベンダーがサービス基盤を所有しており、機器やソフトウェアはベンダーの資産になります。企業は利用費用を支払うことでSaaSの利用が可能になります。所有から利用に変わることでさまざまなメリットをもたらします。 

◼️いつでも・どこでも

従来の業務アプリケーションは社内の端末を用いて利用するのが一般的でした。SaaSはネットワークにアクセスする環境があればサービスの利用が可能です。社外からのアクセスやセキュリティ対策はサービスベンダー側で提供されます。スマートフォンやタブレットなどが普及し社外でもスマートデバイスを利用して業務を行いたいという企業のニーズは高まっています。SaaSは現在の企業のニーズに合致するサービスです。 

◼️アプリケーション連携の容易さ

企業は様々なシステムを導入して社員の生産性向上や企業の競争力強化に結びつけています。当初は特定機能を提供するSaaSが多く、SaaS間のデータ連携は個別カスタマイズが必要でした。昨今、サービス提供ベンダーがアプリケーションの連携を実現するためのAPIを自社での利用にとどまらず外部企業に公開する動きも広がってきました。 


サブスクリプションビジネスとは?

従来購入して利用していたモノの利用権をサービスとして提供し、月額や年額など一定期間ごとに契約料金を支払ってもらうビジネスモデルです。SaaSを提供するベンダーで多く採用されています。ユーザーに利用を継続してもらうことが大切になります。

サブスクリプションビジネスで大切な指標

継続的な収入をえるサブスクリプションビジネスにおいて注目されるようになった指標をご紹介します。

◼️ARR

ARRは年間経常収益のことを指します。サブスクリプションビジネスは月額や年額などの定められた期間ごとに定額料金をユーザーが支払い続けることが前提のサービスとなります。ARRは1年間における収益額の意味であり、サブスクリプションビジネスの1年間での総収益額を指します。プロダクト販売型ビジネスではユーザーに販売した段階で売上が決まるため、月単位や四半期単位の売上目標に向けて売上を積み上げることで目標収益を達成していきます。あくまでも売上目標を立てているだけであり、売上の見通しがつかないこともままありました。サブスクリプションビジネスは最低利用期間を設定していることも多く、期間内は決まった売上が入金されるため見通しが立っている売上があります。継続して取引しているユーザーが増えれば増えるほどARRの規模は大きくなり、期首の段階からARRを踏まえた上で年間予算の策定が行え、売上の見通しが立てやすいといつた特長があります。

◼️チャーンレート

サブスクリプションビジネスは継続的な取引をベースとするビジネスモデルであるため、チャーンレート(解約率)を抑えていく必要があります。サブスクリプションを解約されることはLTVやARRの悪化に直結するため、サービス提供ベンダーにとって解約阻止は重要な取り組みとなります。

◼️LTV

LTVは企業が取引を行っているユーザーとの最初の接触から関係が継続している期間内で得られる収益の総額を算出する指標のことを言います。SaaSはユーザーと長期的に契約を行い、利用を継続してもらうことで成り立つビジネスモデルです。そのため、サービス提供ベンダーとしてはユーザーに自社サービスを評価してもらい、より活用してもらう必要があります。LTVを意識した事業展開を目指す動きに注力する企業が増えています。

◼️カスタマーサクセス

自社サービスを利用することにより成功体験を得られたユーザーは継続的に取引を行ってもらえる可能性が高く、またLTVを高める余地が大きくなります。そのため、ユーザーの成功を支援するための取り組みに注力するサービス提供ベンダーが増えています。カスタマーサクセスを担当する部署はチャーンレートやLTVなどの指標を改善するための施策を検討し、施策を実行する組織です。これまでも企業におけるカスタマーサービスとしてコールセンターなどを利用したカスタマーサポートの提供がプロダクト販売型ビジネスでも行われていましたが、現在注目を集めているカスタマーサービスとはミッションが異なります。