セキュリティと利便性を高め、さらに業務効率を大幅に向上させることができました。
肌着・インナー、ストッキングなどで有名な老舗アパレルメーカーのグンゼは、90年代から20年以上に渡って利用してきたNotes/Dominoの統合情報システムを、全面的に移行するプロジェクトを実施した。2017年からの4年間で、情報共有や文書管理、メールのシステムをクラウドに対応させ、その連携基盤としてHENNGE Oneを導入した。長年の課題の克服とセキュリティの向上を実現した移行プロジェクトについて、同社の技術開発部 IT戦略室 室長 鶴海真治氏にお話を伺った。
— Notes移行の背景について教えて下さい
Notesについては、90年代から20年以上使い続けてきましたが、近年は課題が浮上してきました。ひとつは、「通信の負荷が高く重い」という問題です。弊社の場合、全国各地に拠点があり、時には海外とのやりとりも発生します。ネットワークの利用が高まるにつれ、トラフィックの負荷への問題が生じていました。Notesはもともとクライアント・サーバー型だったシステムなので、スマホやモバイルデバイスからも使いづらいことも問題でした。
もうひとつは、Notesのメールの場合、添付ファイルが7MBという容量制限があったことです。大容量添付ファイルを得意先等へ送信する必要もあり、社員からは不評でした。またNotesのサーバーはアーカイブなどの運用面でも負担が大きかったといえます。セキュアな環境で大容量のファイルのやりとりやアーカイブも行いたいというニーズがIT部門、利用部門ともにありました。
— 20年以上使われたシステムを移行するにあたって、不安はなかったのでしょうか
実は、過去何度かNotesのメジャーバージョンアップのタイミングで移行は俎上にのぼりました。移行プロジェクトの開始は2017年からですが、その5年前の2012年にも移行先のツールを検討しました。当時はクラウド型のメールはGoogleのものが台頭してきた頃で、製品評価も行いました。その段階では、まだ導入には踏み切れないという判断でした。HENNGEのような、SaaSのセキュアな環境も今ほど普及しておらず、セキュリティの面で自信がなかったことが理由です。
— 移行プロジェクトへの意思決定は問題なかったでしょうか
当然、費用対効果をどう示せるかが課題でした。Notesのそのままの継続と、新システムに全面刷新を比較すると、一見継続の方がコストはかからないのですが、保守費用や従来のシステムの運用コストや人的なコストまで考えると、全面移行の方がROIが高いというロジックで稟議書を書きました。さらに今後、先細りしてくるNotesのスキルを持つエンジニアの確保や、社内のIT部門の人材のスキルの今後、また、社内の働き方改革やワークスタイルへの気運が高まっていたことから、移行はこの時期しかないという理由でした。多少「作文」はしたのですが。
その頃は、まだコロナ禍の前なので、リモートワークなどはそれほど考慮していませんでしたが、もし移行を見送ってNotesのままだったら今回のコロナ禍は乗り切れなかったのではないかと思います。
— 新システムのアクセス基盤としてHENNGEを採用された理由を教えて下さい
まず、情報系のシステムとしてメールとワークフロー・文書管理に分けました。メールはMicrosoftのOffice 365(現Microsoft 365)、ワークフロー・文書管理はワークスアプリケーションズの「ArielAirOne(以下、Ariel)」を採用しました。
当初、ワークフローもすべてMicrosoft 365を導入するという選択肢もあったのですが、それまでのNotesの情報資産の継承や移行の工数を考えると「Ariel」が適しているという判断でした。そして、この2つのシステムを統合的に利用するための基盤として「HENNGE One」(採用当時はHDE One)を導入しました。複数のクラウドサービスをシームレスに使い、かつ社外からのアクセスにも安全かつ効率的に使えるという意味では、HENNGE一択だったと思います。
— 新システムに移行してからの普及についての施策はいかがだったのでしょうか
利用部門とのコミュニケーションを密にし、ある程度要望も取り入れていくことが大事だと考え、全国で説明会を行いました。プロジェクトの時期は、まだWeb会議環境も準備できてなかったので、人海戦術で手分けして、延べ71回、2,000名に対して説明をしました。その結果、それまでのNotesユーザーにも抵抗なく受け入れられたと思います。
— 社内での移行をめぐる課題はありましたか
利用部門にとっては、Notesへの不満もあったので移行は抵抗なく受け入れられましたが、課題は、過去に蓄積されたDBやメールのコンテンツの移動でした。ユーザー部門などで作られたDBも膨大で、1300以上あったのですが、何度も現場への要請を行い、プロジェクト開始前の断捨離で800、最終的には466程度に減らしました。またメールについても基本的には以前のログは移行しないという方針にしました。コンプライアンス上の必要性からNotesのアーカイブとして一定期間保管していますが、基本的には残さない。DBもコンテンツもメールログも不必要なものは移行しないというポリシーを打ち出しました。
— HENNGEの導入による効果について教えて下さい
HENNGEの効果は一言でいえば、セキュリティと利便性を高め、業務効率を大幅に向上させたことです。HENNGEの役割としては、「メールのバックアップとセキュリティ管理」、「セキュアブラウザによる安全なモバイル活用」、「複数のSaaS利用のためのシングルサインオン」、「大容量ファイルの送信やアーカイブ」の4つです。
メールについては、Office 365のメールとHENNGEのバックアップの併用で、利便性は大きく向上し、セキュリティも担保されました。Office 365のメールの誤送信防止機能はあまり使っておらず、HENNGE Oneのメールを保管するアーカイブ機能を使っています。
Notes時代のメールの制限から解放され、大容量のファイルが安全にやりとりできる効果も大きいと思います。また、社員のモバイル機器は基本的に会社支給もありますが、社員には申請制にして、個人の機器の活用も認めています。そのため、業務についてはすべてHENNGEのセキュアブラウザを利用するポリシーにしています。個人の端末にデータが保存されることや、外部に流出するリスクを防ぐための配慮です。
HENNGE Oneを通して一つのID/パスワードで、Microsoft 365とArielにアクセスさせているので、アクセスの「経路管理」の面でも安全です。また、ArielのサーバーはAWSの専用ネットワーク接続によるDirect Cloudで運用しています。HENNGEはこのAWSへのセキュアなゲートウェイの役割も果たしています。HENNGEが、セキュリティ、認証とアクセス制御、経路管理という3つの要件を満たしてくれていることに満足しています。
— 今後の展望とHENNGEへの要望をお聞かせください
現在、シングルサインオンで活用しているのは、ArielとMicrosoft 365の2つですが、今後の希望としてはBIなどのデータ活用のツールやSFA、営業管理ツールなどもHENNGEを入り口にして活用していきたいと考えています。会社としても、働く場所を自在に決めれる働き方改革を目指しています。
そのためにHENNGEには、SaaSやクラウドサービスのSSOやSAML認証の拡大をさらに進めてもらうことを期待しています。主要なクラウドサービスはほとんど対応できていると思いますが、海外系のセキュリティツールの一部と相性問題がありました。他のセキュリティのツールとも共存して、利用の輪を広げていってもらいたいと思っています。