町田市教育委員会

ChromebookとHENNGE Oneの導入により、Google Workspaceへのセキュアなアクセス環境を実現

  • 教育・自治体

ChromebookとHENNGE Oneの導入により、教職員による安心・安全な業務利用と 働き方改革にも貢献できると考えています。

— 町田市の教育分野における取り組みについて教えてください

町田市教育委員会では、「教育の情報化」「えいごのまちだ」を2本柱に、「主体的に学び、自己決定できる子供たち」の育成を目指しています。中でも重点事業として掲げている教育の情報化推進では、学校のICT環境の整備を進めています。今やICT機器は、コミュニケーションを行う上で必須のツールとなっており、あって当たり前のものと考えられています。そのリソースを、いかに効率よく効果的に配分していくかが、私たち教育センターに課された命題です。

— 町田市は「5ヵ年計画17-21」の中で、ICT機器を活用した効果的な授業の推進と、教職員の校務負担の軽減を目標に環境の整備を推進していますが、その背景と狙いについて教えてください

2017年3月に公示された文部科学省の新学習指導要領では、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となるなど、教育分野のICT化が急速に進んでいきます。当市ではこれに先駆けて「町田市5ヵ年計画17-21」を策定し、教育の情報化を重点施策に位置づけ、機器の導入・配備をスタートさせました。そしてこの際、課題として挙がったのが以下の点です。

⚫︎ 既存の端末やネットワーク機器の老朽化
⚫︎ ICT機器の管理負担の増加
⚫︎ 文部科学省指針「教育情報セキュリティのための緊急提言」に沿った情報セキュリティへの対応

— そうした課題に対応するため、どのようにICT環境の整備を進めていったのでしょうか

授業などで使う教育用端末において、生徒がタッチパネルで容易に扱えることはもちろん大きなメリットですが、一方で社会へ出たときのためにキーボードも使いこなしてもらう必要があります。このタブレットとPCが持つ2つの機能(2in1)を兼ね備えた候補のひとつがChromebookでした。

— 教育分野へのChromebookの大規模な導入は、これまで国内で前例がなかったと聞きます

米国の教育市場では既に6割近くのシェアを持つChromebookですが、日本での導入は一部の私立学校などに限られていました。iPadなどのタブレットやWindows PCと比べると、身近な存在とは言えません。

しかしChromebookは、Windows PCと比べて、導入や維持費にかかるコストを大きく削減できるというメリットがあります。また、教育機関では、「Google Workspace for Education」を無償・無制限で利用できます。さらに、Windows PCと違って、端末本体にデータを残さず、環境も容易に復元できるため、もし故障してもハードウェアを交換するだけで済みます。このため運用が容易で、管理の工数も大幅に軽減できるのです。管理・運用面やコストなど総合的に評価し、Chromebookの採用を決めました。

以前に整備した無線LANでChromebookを使用すると、設備をかなり増設しなければならず、その費用は莫大なものになってしまいます。そこで今回の導入では、LTE環境でChromebookを利用することで初期投資の軽減を図りました。校外学習や自宅への持ち帰りなど、端末を教室外や学校外で使うことも考慮すると、LTEはベストの選択だったと思います。

今回の大規模なChromebook導入にあたっては、前例もノウハウもないことから不安もありましたが、当市のパートナーの1企業であるNTTデータの協力もあって、問題なく完了しています。

— 導入の状況 はいかがでしょうか

2017年12月に2校を対象にテスト導入したのち、順次、市内の小中学校62校へ展開を進めていきました。各校それぞれ40台の端末と、全教職員2,000人に対して1人1台のChromebookを配備し、2019年12月にLTE環境のChromebook4,500台の展開を完了しました。

— 今回のICT環境の整備においては、アクセス制御を実現するためにHENNGE Oneを導入されていますが、その理由を教えてください

業務の上で、成績などの個人情報を扱うことを考えると、セキュリティは最も重視すべき要素の一つでした。そこで、Windowsシンクライアントの採用により、データを端末に残さないセキュアな環境で業務を行なっております。また、学習系ネットワークと校務系ネットワークを物理的・論理的に分離することで、児童生徒によるアクセスや情報漏えいの防止を図るなどさまざまな対策をとっています。

メールも例外ではありません。メールシステムの更改にあたって老朽化したオンプレミス環境をGmailへ切り替えることにしたのですが、LTE環境だけでは配布したChromebookやWindowsシンクライアント以外からでもアクセスできてしまいます。そこで認証システムが持っているアクセス制御機能を導入し、端末を限定してGmailを使えるようにしようと考えたのですが、Chromebookの特殊性もあって難航しました。具体的には、認証システムとChromebook向けの管理システムの相性が問題になったのです。

WindowsやiPadの場合、アクセス制御に対応したサービスは数多くあります。しかしChromebookの場合は、アクセス制御が実現できる製品は世の中に多くありませんでした。この難しい要件に応えてくれたのは、1989年から町田市のICT環境を支え、Chromebook導入でもサポートをしてもらったNTTデータでした。NTTデータの担当者も、難しい要件に対する提案製品に難儀したそうですが、最終的に決め手となったのは、HENNGEの担当者の対応力だそうです。何か疑問を投げかけると、良い点だけでなく、ダメな面まで含めてオープンに情報を提供してくれたため、お互いの信頼が高まり、前例のない難しい課題もクリアできたと聞いています。

また、HENNGEは自社でもChromebookを使用し運用面で豊富なノウハウを持っていることや、今回の提案にあたってHENNGEで事前検証を実施し、実現性が確認できたことでNTTデータの提案製品として 採用につながったようです。NTTデータからの情報を参考にし、検討を重ね、HENNGEOneをChromebookの認証システムとして採用することに決めました。

— HENNGE One導入のスケジュールと現在の利用状況について教えてください

2018年冬、校務支援システム用の仮想基盤を構築するに合わせて検討を開始。構築プロジェクトは12月にスタートしました。HENNGEOne導入に伴うシステム切替を長期にわたって停止することができる2019年5月のゴールデンウイークに実施しています。

HENNGEOneは児童・生徒、教職員を合わせて、3万5,000ユーザーを対象にしております。従来と操作が変わったことから、導入当初はサポートデスクにかなりの問い合わせがあったようですが、現在は落ち着いております。

— 今回の導入で得られた効果について教えてください

教職員の校務面の効果が大きいと思います。校務系ネットワーク上にWindows仮想環境を構築し、Chromebookから校務用および授業用のデータへ安全にかつ容易に接続できる仕組みができたことで、教職員は「いつでもどこでもセキュア」に教務環境を利用することができるようになりました。また、副次的な効果として、テレワークによる働き方改革の実現もあります。以前は、ちょっとした事務処理のために1時間半もの時間をかけて学校まで通っていた教職員もいましたが、これからはそういったことはありません。学校に遅くまで残る教師も確実に減っていると思います。

— 今後の展望をお聞かせください

現在、国は1人1台環境を目指す「GIGAスクール構想」を推進していますが、これに対応するために、現在の環境をどう活用するのがベストなのか考えていきたいです。また、不登校の生徒の在宅学習に使えないかも検討してみたいと思います。

— HENNGEへの期待

Google WorkspaceとChromebookは当市の事業において欠かせないものになっております。引き続き、安定稼働を期待すると共に安心・安全の機能を提供してもらいたいと思っております。