サイバー攻撃をリアルタイムで把握する可視化ツール7選
選び方と活用ポイントを解説

最新更新日: 2025/11/4

近年、サイバー攻撃の巧妙化が進み、企業や個人がリアルタイムで脅威を把握する重要性が増しています。

本記事では、サイバー攻撃の現状と可視化の必要性を解説し、リアルタイムで監視できる「可視化ツール7選」を紹介します。適切なツールを導入し、脅威に即座に対応できる体制を整えましょう。

 目次

  1. サイバー攻撃の現状と可視化の必要性
    1. サイバー攻撃の増加と影響
    2. サイバー攻撃可視化の重要性と目的
  2. そもそもサイバー攻撃の可視化とは
    1. 可視化の定義とメリット
    2. 可視化による脅威の早期発見と対応
  3. サイバー攻撃をリアルタイムで把握する可視化ツール7選
    1. NICTER Atlas
    2. Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map
    3. Digital Attack Map
    4. IBM X-Force Exchange
    5. Live Cyber Threat Map
    6. Darktrace Threat Visualizer
    7. SonicWall Security Center Live Attack Map
  4. サイバー攻撃可視化ツールの選定ポイント
    1. 導入目的の明確化
    2. ツールごとの機能比較
    3. 導入規模と予算
    4. 導入後の運用体制
  5. 警察機関が活用する可視化技術
    1. インターポールとトレンドマイクロの協力
    2. 日本の警察庁の取り組み
  6. まとめ

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サイバー攻撃の現状と可視化の必要性

サイバー攻撃はますます巧妙化・多様化しており、企業や個人を狙った脅威が拡大しています。特に、標的型攻撃やランサムウェアなどが急増し、被害額も年々増加している状況です。そのため、リアルタイムで攻撃を可視化し、早急に対応することが求められています。

サイバー攻撃の増加と影響

近年、世界中でサイバー攻撃が増加しており、その被害は年々深刻になっています。

特に、ランサムウェア攻撃は企業や自治体を標的にするケースが多く、データを暗号化して身代金を要求する手口が横行しています。また、DDoS(分散型サービス拒否)攻撃によってWebサイトが長時間ダウンする被害も後を絶ちません。

さらに、国家が関与するサイバー攻撃も増えており、政府機関やインフラ企業が狙われるケースが確認されています。中でもサプライチェーン攻撃は、取引先や協力会社を経由してシステムに侵入し、広範囲に被害を及ぼす手法です。
こうした攻撃は、単なるITトラブルではなく、企業の信頼や経済活動に深刻な影響を与えるでしょう。

サイバー攻撃可視化の重要性と目的

サイバー攻撃の脅威が増す中、企業や組織にとって攻撃の可視化は非常に重要な対策の1つです。可視化とはネットワーク上の異常な動きをリアルタイムで監視して、攻撃の兆候を素早く検知することを指します。

可視化の最大の目的は、早期発見と迅速な対応です。
サイバー攻撃は目に見えない形で進行することが多く、気付いたときにはすでに甚大な被害が発生しているケースもあります。リアルタイムで攻撃を可視化することにより、被害を最小限に抑えることができるでしょう。

また、可視化はセキュリティ対策の強化にもつながります。攻撃のパターンや傾向を把握することで、セキュリティポリシーの改善や、従業員のセキュリティ意識向上に役立ちます。

警察白書で示されたサイバー攻撃の現状と知られざる手口
警察白書で示されたサイバー攻撃の現状と知られざる手口

2024年7月26日発行の『令和6年版 警察白書』、2024年9月19日の『令和6年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』の内容をもとに、サイバー空間の安全を確保するための具体的な施策や方針、セキュリティ戦略の構築について解説します。

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そもそもサイバー攻撃の可視化とは

サイバー攻撃の可視化とは、ネットワーク上の異常な動きをリアルタイムで監視し、攻撃の兆候を視覚的に捉える技術です。可視化を活用することで、従来は発見が困難だった不正アクセスやマルウェアの侵入を素早く検知できます。

特に、サイバー攻撃が複雑化する中で、可視化技術の導入は組織のセキュリティ対策として欠かせません。ここでは、可視化の定義やメリット、脅威の早期発見における役割について解説します。

可視化の定義とメリット

サイバー攻撃可視化の定義は、ネットワークやシステム上の動きをリアルタイムで把握し、異常な通信や攻撃の兆候を視覚的に分析する技術のことです。可視化にはログ分析やトラフィック監視、脅威インテリジェンスとの連携など、さまざまな手法があります。

可視化のメリットは、攻撃の早期発見です。従来のセキュリティ対策では、攻撃が成功した後に気付くことが多かったのに対し、可視化により攻撃の進行状況をリアルタイムで把握し、迅速な対処が可能になります

また、可視化は組織全体のセキュリティ向上にもつながります。攻撃パターンを分析しやすくなることで、セキュリティポリシーの改善や従業員の意識向上が図れるでしょう。さらに、経営層に対しても視覚的なデータを用いた説明ができるため、セキュリティ対策の重要性を理解してもらいやすくなります。

可視化による脅威の早期発見と対応

サイバー攻撃は、企業や組織のシステムに密かに侵入し、時間をかけて被害を拡大させるケースが少なくありません。そのため、早期発見が極めて重要です。可視化技術を活用することで、攻撃の兆候を検知し、被害が発生する前に対応できる可能性が高まります。

例えば、ログの可視化により、不審なログイン試行や異常なデータ転送を即座に特定できます。また、トラフィック可視化を行うことで、通常の通信パターンとは異なる動きを検知し、DDoS攻撃やマルウェア感染の早期対応が可能です。

さらに、可視化はインシデント対応の迅速化にもつながります。従来は攻撃が発生してから原因を特定するまでに時間がかかっていましたが、可視化ツールを活用すれば、異常の発生源を即座に把握し、適切な対策をとることができます。これにより、被害を最小限に抑えられるでしょう。

サイバー攻撃をリアルタイムで把握する可視化ツール7選

サイバー攻撃は年々増加・巧妙化しており、企業や組織はリアルタイムで監視し、迅速に対応することが求められています。そのため、サイバー攻撃の可視化ツールを活用し、攻撃の発生状況や種類を視覚的に把握して防御策を強化することが重要です。

ここでは、世界中で利用されている代表的な可視化ツール7選を紹介します。それぞれの特徴や活用方法を理解し、自社のセキュリティ対策に役立てください。

NICTER Atlas

NICTER Atlasは、国立研究開発法人情報通信研究機構が開発したサイバー攻撃の可視化ツールです。国内外のダークネット(未使用IPアドレス領域)に送信される不審なパケットを収集・分析し、3Dマップ上で攻撃の発生状況を確認できます。

特に、標的型攻撃やDDoS攻撃の監視に優れており、日本国内のセキュリティ研究機関やISPと連携しながら、脅威の特定や攻撃傾向の分析を行います。リアルタイム監視だけでなく、過去の攻撃データをもとにした傾向分析も可能なため、企業のSOC(Security Operation Center)などでの活用にも適しています。

出典:NICTER Atlas

Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map

Kaspersky Cyberthreat Real-Time Mapは、世界のサイバー攻撃をリアルタイムで可視化できるツールです。カスペルスキーのセキュリティネットワークが収集したデータをもとに、各国で発生している攻撃の種類や頻度をマップ上に表示します

このツールでは、マルウェア感染やフィッシング攻撃、ネットワークの脆弱性スキャンなど、多様なサイバー攻撃を検出できます。視覚的に分かりやすいインターフェースを備えており、攻撃がどこから発信され、どこを標的にしているのかを瞬時に把握することが可能です。

企業のセキュリティ担当者にとって、世界的な脅威の傾向を把握し、適切な対策を講じるための貴重な情報源となるでしょう。

出典:Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map

Digital Attack Map

Digital Attack Mapは、世界中で発生しているDDoS(分散型サービス拒否)攻撃をリアルタイムで可視化できるツールです。Googleとネットワークセキュリティ企業Arbor Networksが共同開発し、インターネット上の異常なトラフィックを分析し、攻撃の規模や対象地域をマップ上に表示します

このツールでは、DDoS攻撃の発生地点、攻撃の流れ、攻撃量の推移などを視覚的に確認できます。特定の日を選択して過去の攻撃データを振り返る機能も備えており、攻撃の傾向やパターンを分析するのに役立ちます。

企業のセキュリティ担当者や研究機関にとって、グローバルなDDoS攻撃の動向を把握し、適切な対策を検討するための貴重な情報源となるでしょう。

出典:Digital Attack Map

IBM X-Force Exchange

IBM X-Force Exchangeは、世界中の最新のサイバー脅威情報をリアルタイムで共有・分析できる脅威インテリジェンスプラットフォームです。IBMのセキュリティ専門家が収集した脅威データを活用し、企業や組織がサイバー攻撃の兆候をいち早く察知し、対策を講じるための情報を提供します。

このプラットフォームでは、マルウェアの分析、攻撃の発生源の特定、業界ごとの脅威トレンドの可視化が可能です。セキュリティ担当者は、攻撃者の手口や使用する手法を理解し、自社のセキュリティ対策を強化できます。

IBM X-Force Exchangeは、セキュリティインシデント対応やリスク評価に役立ち、SOC(Security Operation Center)やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)での活用が推奨されるツールです。

出典:IBM X-Force Exchange

Live Cyber Threat Map

Live Cyber Threat Mapは、世界中のサイバー攻撃を可視化する脅威マップですセキュリティ企業Check Pointが提供しており、自社の脅威インテリジェンスネットワークを活用して、マルウェアの感染状況、フィッシング攻撃、ネットワーク侵入の試みなどをリアルタイムで表示します。

このツールでは、攻撃の種類ごとに色分けされた視覚的なマップが提供され、どの国が攻撃を受けているのか、どこから攻撃が発信されているのかを直感的に把握できます。また、過去の脅威データを分析することで、特定の攻撃の傾向やサイバー犯罪の手口を理解するのにも役立ちます。

企業のセキュリティ担当者や研究機関にとって、グローバルなサイバー脅威の動向を把握し、適切な防御策を講じるための有益な情報源となるでしょう。

出典:Live Cyber Threat Map

Darktrace Threat Visualizer

Darktrace Threat Visualizerは、AIを活用してネットワーク内外のサイバー脅威をリアルタイムで可視化するセキュリティツールですDarktraceの自律型AI技術により、通常のネットワーク動作を学習し、異常なアクティビティや潜在的な攻撃を即座に検出します。

このツールの特徴は、直感的な3Dインターフェースを備えており、脅威の発生場所や影響範囲を視覚的に把握できる点です。従来のルールベースのセキュリティシステムとは異なり、AIが新たな脅威を自動で認識し、組織ごとに適応するため、未知の攻撃にも対応しやすくなっています。

Darktrace Threat Visualizerは、企業のSOCやCSIRTでの活用に適しており、脅威の可視化と迅速な対応をサポートするツールとなるでしょう。

出典:Darktrace Threat Visualizer

SonicWall Security Center Live Attack Map

SonicWall Security Center Live Attack Mapは、世界中で発生しているサイバー攻撃をリアルタイムで可視化する脅威マップです。SonicWallのセキュリティインフラを通じて収集された脅威データをもとに、マルウェアの感染状況、侵入試行、DDoS攻撃などの動向を視覚的に表示します

このツールでは、攻撃の発生地点や対象地域を特定し、サイバー脅威の傾向を分析することが可能です。また、過去のデータを遡って攻撃のパターンを確認できるため、長期的なセキュリティ戦略の策定にも活用できます。

企業のセキュリティ担当者にとって、リアルタイムの脅威インテリジェンスをもとに、迅速かつ適切なセキュリティ対策を講じるための重要な情報源となるでしょう。

出典:SonicWall Security Center Live Attack Map

サイバー攻撃可視化ツールの選定ポイント

可視化ツールを導入する際は、目的、機能、規模、予算、運用体制を総合的に検討することが重要です。ここでは、選定時に考慮すべき4つのポイントについて詳しく解説します。

導入目的の明確化

サイバー攻撃の可視化ツールを選定する際、まず導入目的を明確にすることが重要です。
企業や組織ごとに直面するセキュリティ課題は異なるため、どのような脅威を可視化したいのか、どの範囲を監視するのかを整理する必要があります。

例えば、DDoS攻撃の監視が目的であれば「Digital Attack Map」のようなツールが適しています。一方で、ネットワーク内の異常検知を重視するなら「Darktrace Threat Visualizer」のようなAIを活用したツールが有効でしょう。

目的を明確にすることで、自社に最適なツールを選びやすくなり、無駄なコストを削減できます。

ツールごとの機能比較

可視化ツールには、それぞれ異なる機能や特長があります。
選定時には、リアルタイム監視の精度、データの可視化方法、脅威インテリジェンスとの連携などを比較することが重要です。

例えば、「NICTER Atlas」はダークネットのトラフィックを監視し、攻撃の傾向を分析するのに適しています。一方、「IBM X-Force Exchange」は、世界中の最新の脅威情報を提供し、脅威インテリジェンスの活用に強みがあります。
AIを活用してネットワーク内の異常を検知する「Darktrace Threat Visualizer」のようなツールも、未知の攻撃対策には有効でしょう。

導入規模と予算

可視化ツールの導入には、企業規模やセキュリティ体制に応じた適切な予算設定が必要です大企業はSOCとSIEMを連携させ、高度な脅威監視を実現できます。一方、中小企業はクラウド型ツールを活用し、コストを抑えながらセキュリティを強化できます。

無料で利用できる「Digital Attack Map」や「Kaspersky Cyberthreat Real-Time Map」は手軽な選択肢です。一方、AI解析や脅威インテリジェンスを活用したい場合は、「Darktrace Threat Visualizer」や「IBM X-Force Exchange」などの有償ツールが有効でしょう。

導入後の運用体制

可視化ツールを導入した後は、適切な運用体制を整えることが重要です。ツールを活用しても、監視・分析を行う専門チームがいなければ、効果的なサイバー攻撃対策は難しくなりますそのため、SOCやCSIRTを組織することが推奨されます。

また、ツールの設定や運用ポリシーの定期的な見直しも欠かせません。攻撃手法は日々進化しているため、最新の脅威情報をもとにルールの更新や社員のセキュリティ教育を実施することが求められます。適切な運用体制を確立し、継続的な監視と改善を行うことで、サイバー攻撃のリスクを最小限に抑えられるでしょう。

警察機関が活用する可視化技術

サイバー犯罪対策の強化に向け、警察機関は可視化技術を積極的に活用しています。ここでは、インターポールとトレンドマイクロの協力、および日本の警察庁の取り組みについて解説します。

インターポールとトレンドマイクロの協力

インターポール(国際刑事警察機構)は、サイバー犯罪の監視と対策を強化するため、トレンドマイクロと連携しています。この協力の一環として、トレンドマイクロは最新の脅威インテリジェンスや可視化技術を提供し、警察機関が攻撃の手口やパターンを分析できるようサポートしています。

この取り組みにより、サイバー犯罪の摘発が進み、特にフィッシング詐欺やマルウェア配布ネットワークの特定が強化されました。また、インターポールのサイバー犯罪対策センター(IGCI)は、可視化ツールを活用して世界規模での攻撃の傾向を把握し、各国の捜査機関と情報を共有しています。

可視化技術の導入により、国境を越えたサイバー犯罪に対する迅速な対応と予防策の強化が可能となるでしょう。

日本の警察庁の取り組み

日本の警察庁は、サイバー犯罪への対応を強化するために可視化技術を活用した監視・分析体制を構築してきました。特に、「サイバーレンジ」と呼ばれる仮想環境を活用し、実際の攻撃手法を再現することで、捜査官の技術向上や攻撃手法の解析を行っています。

また、国内外の捜査機関や企業と連携し、標的型攻撃やマルウェア感染の経路を可視化するシステムを運用しています。これにより、攻撃の早期発見や被害の拡大防止が可能です。

警察庁は国際的なサイバー犯罪対策にも積極的に取り組んでおり、インターポールをはじめとする各国の法執行機関と協力しながら、可視化技術を活用した捜査を進めています。

まとめ

サイバー攻撃の脅威が拡大する中、リアルタイムでの可視化は、迅速な対応と被害軽減に不可欠な要素となっています。本記事では、サイバー攻撃の現状や可視化の重要性を解説し、実際に活用できる可視化ツール7選を紹介しました。

また、ツールを導入する際の選定ポイントや、警察機関による可視化技術の活用事例も取り上げました。可視化技術は今後さらに進化し、AIや脅威インテリジェンスとの連携により、より高度なセキュリティ対策が可能になるでしょう。

サイバー攻撃から組織を守るためには、適切な可視化ツールを選び、継続的な監視と運用体制の強化を行うことが重要です。本記事を参考に、自社のセキュリティ強化に役立ててください。