SIEMとSOARの違いと連携のメリット
–クラウドセキュリティを最適化する方法を解説–

最新更新日: 2025/12/3

現代の企業が直面するセキュリティ脅威に対抗するには、インシデント検出から迅速な対応まで、包括的なセキュリティ体制が必要です。その中で、SIEMとSOARは重要な役割を果たします。

本記事では、SIEMとSOARの役割や機能を解説し、両者を連携させることで得られるメリットや導入の際のポイントについても詳しく紹介します。

 目次

  1. SIEMとは?セキュリティイベントの統合管理ソリューション
    1. SIEMの定義
    2. SIEMの主な機能
  2. SOARとは?セキュリティ対応の自動化とオーケストレーション
    1. SOARの定義
    2. SOARの主な機能
  3. SIEMとSOARの違いとは? それぞれの役割と連携の重要性
    1. 役割の違い
    2. 連携による効果
  4. SIEMとSOARを組み合わせることによる3つのメリット
    1. リアルタイム監視とインシデント対応の迅速化
    2. セキュリティ運用の効率化
    3. 統合的なセキュリティポリシーの適用
  5. SIEMとSOARを導入する際のポイントと基準
    1. 必要な機能が備わっているか確認
    2. 運用負荷とコスト管理を考慮する
    3. 既存環境との連携が可能か確認する
    4. HENNGE One Identity Editionとの連携
  6. HENNGE OneとSIEM/SOARの連携によるセキュリティ強化
    1. HENNGE Oneの概要
    2. SIEM/SOARとの連携
    3. クラウドセキュリティの強化
  7. まとめ

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SIEMとは?セキュリティイベントの統合管理ソリューション

SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)は、組織内のセキュリティイベントを一元的に収集・分析し、潜在的な脅威を可視化するソリューションです。複数のセキュリティシステムからデータを統合し、インシデントの早期発見と迅速な対応を支援します。

SIEMの定義

SIEMは、組織内の多種多様なセキュリティ情報やイベントデータを集約し、分析・監視するソリューションです。ネットワーク内で発生する膨大なデータやログ情報を統合することで、潜在的な脅威や異常行動の早期発見を可能にします。

SIEMの特徴は、異なるシステムやアプリケーションからリアルタイムで情報を収集し、予め設定されたルールやAI分析にもとづいてアラートを生成する点です。また、監査ログの保持や、法規制の順守に必要な証跡の提供も行います。これにより、企業のセキュリティ対策を強化し、リスク管理やインシデント対応の効率化を支援する重要な役割を担っています。

SIEMの主な機能

SIEMの主な機能は、大きく分けてログ管理、リアルタイム監視、異常検知、アラート生成の4つです。

  • ログ管理
    ネットワークやアプリケーションからの膨大なデータを一元化し、長期間にわたって保存します。
  • リアルタイム監視
    瞬時に脅威を検出し、迅速な対応が可能です。
  • 異常検知機能
    通常の動作パターンと比較して異常な行動を識別し、潜在的なインシデントを特定します。
  • アラート生成機能
    事前に設定されたルールにもとづく自動的な通知が行われ、迅速な対応を促します。
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SOARとは?セキュリティ対応の自動化とオーケストレーション

SOAR(セキュリティオーケストレーション・自動化・レスポンス)は、セキュリティオペレーションの効率化を目的としたプラットフォームです。インシデント対応のプロセスを自動化し、オペレーション全体の迅速化と最適化を図ります。

SOARの定義

SOARの定義は、セキュリティ運用を自動化し、オーケストレーションによって複数のツールやシステムを連携させるプラットフォームです。これにより、セキュリティ担当者の手作業が削減され、迅速なインシデント対応が可能となります。

SOARの主要な目的は、発生するインシデントに対して効率的に対処することと、セキュリティオペレーション全体を標準化することです。また、脅威インテリジェンスやアラート情報を自動で収集し、適切な対応を自動実行するため、組織のセキュリティ体制を高度に効率化します。

SOARの主な機能

SOARの主な機能には、オーケストレーション、自動対応、インシデント管理の3つが含まれます。

  • オーケストレーション 
    異なるセキュリティツールやシステムを連携させて一貫したセキュリティオペレーションを実現します。
  • 自動対応機能
    インシデントが検知されると定められた手順に従い自動で対処し、対応のスピードと正確性を向上させます。
  • インシデント管理
    発生したインシデントに関するデータの集約や分析を行い、迅速な意思決定を支援します。

これらの機能により、SOARは、リソースの効率的な活用とセキュリティ対応の迅速化をサポートします。

SIEMとSOARの違いとは? それぞれの役割と連携の重要性

SIEMとSOARは、セキュリティ管理において異なる役割を担います。SIEMが主にセキュリティイベントの検出とログ管理を担当する一方で、SOARは検知されたインシデントへの対応を自動化し、オペレーション全体を効率化します。

役割の違い

SIEMとSOARは共にセキュリティ運用を支援しますが、「検出」と「対応」の異なる役割を担っています

SIEMは、組織内のさまざまなシステムからセキュリティイベントを収集・統合し、リアルタイムで脅威を監視するためのプラットフォームです。異常行動やインシデントの兆候を検出することに特化しており、脅威の早期発見を可能にします。

SOARは、検出されたインシデントに対する対応プロセスを自動化し、迅速かつ効率的に対処することを目的としたプラットフォームです。インシデント発生後の対応手順を管理・実行し、セキュリティチームの負担を軽減するためのツールとして機能します。

連携による効果

SIEMとSOARを連携することで、セキュリティ対策の効率と迅速性が向上します

SIEMがインシデントをリアルタイムで検知し、潜在的な脅威を特定するとその情報をSOARが受け取り、自動的に対応プロセスを開始します。例えば、インシデント発生時にSOARは事前に定められた手順に従って、アカウントの隔離や通信のブロックなどを迅速に実行するため、被害の拡大を防ぎます。

また、SOARの自動化によって対応時間が短縮され、担当者は複雑な分析に集中できる環境が整います。このように、両者の機能を組み合わせることで、組織は高度な脅威にも迅速かつ的確に対処できる体制が構築されるでしょう。

SIEMとSOARを組み合わせることによる3つのメリット

SIEMとSOARを連携させるメリットは、下記3つが挙げられます。ここでは、各メリットを詳しく解説します。

  • リアルタイム監視とインシデント対応の迅速化
  • セキュリティ運用の効率化
  • 統合的なセキュリティポリシーの適用

リアルタイム監視とインシデント対応の迅速化

SIEMとSOARの連携により、リアルタイムでの監視とインシデント対応のスピードが大幅に向上します。

SIEMが常にネットワークやシステムの動作を監視し、異常な行動や脅威を瞬時に検知することで、早期発見が可能です。検知されたインシデント情報はSOARに引き渡され、自動的に対応プロセスが開始されます。

例えば、ネットワーク内で不審なアクセスが検知された場合、SOARはその情報にもとづいて迅速にアカウントのアクセス制御や一時的な隔離などの対策を実行します。これにより、被害が拡大する前に問題を封じ込めることが可能です。

また、担当者の手動操作を減らすことで、対応が遅れるリスクも低減されます。このように、リアルタイム監視と自動対応の仕組みが一体化することで、迅速で精度の高いセキュリティ対応が実現します。

セキュリティ運用の効率化

SIEMとSOARの連携により、セキュリティ運用の効率化が大きく促進されます。 
まず、SIEMが収集したログデータや脅威情報をSOARが自動的に分析し、対応策を実行することで、インシデント発生時の担当者の作業負担を大幅に軽減可能です。

この自動化により、手動での確認や対応にかかる時間が削減され、セキュリティチームは戦略的な対応や複雑な問題の解決に集中できるようになります。

さらに、SOARはワークフローを標準化し、インシデント対応のプロセスを一貫して管理するため、担当者間での対応のばらつきを防ぎます。また、過去のインシデントデータや対応履歴が蓄積されるため、再発防止策や運用改善にも役立ちます。

統合的なセキュリティポリシーの適用

SIEMとSOARを連携させて統合的なセキュリティポリシーを適用することで、管理の一貫性が向上し、効率的なリスク対応が可能になります。

SIEMは複数のシステムやアプリケーションからデータを集約・一元管理し、組織全体のセキュリティ状況を把握しやすくするため、ポリシーの整合性を保てます。SOARはインシデント対応の標準化と自動化を支援し、設定したポリシーにもとづく迅速な対応を実現するため、組織のセキュリティ基準を確実に適用可能です。

例えば、特定の脅威が検知された際に対応ルールをSOARに設定しておけば、インシデントに対して一貫した対応が可能です。また、法規制や業界基準にもとづいた対応を自動化することで、コンプライアンスを強化し、監査にも対応しやすくなります。このように、統合的なポリシー適用により、リスク低減とセキュリティ管理の効率化が実現します。

SIEMとSOARを導入する際のポイントと基準

SIEMとSOARを効果的に導入するためには、企業の規模やセキュリティ要件に合わせて適切な機能を選定し、運用負荷やコスト管理を考慮することが重要です。また、既存システムとの連携やクラウド対応の有無も確認する必要があります。

必要な機能が備わっているか確認

SIEMとSOARを導入する際には、企業のセキュリティ要件に合致した機能が備わっているかを確認することが重要です。

例えば、監視対象が広範囲に及ぶ場合、SIEMのリアルタイム監視やログ管理が十分に対応できるかを確認する必要があります。SOARについては、インシデント対応の自動化レベルやプロセスのカスタマイズ性が重要で、インシデントの種類に応じて柔軟に設定できる機能が求められます。

さらに、組織のセキュリティ体制や業務環境によっては法規制への対応も必要となるため、SIEMとSOARが必要なコンプライアンス基準を満たしているか確認します。これらの要件に適合したソリューションを選ぶことで、持続的かつ効果的なセキュリティ運用が可能となるでしょう。

運用負荷とコスト管理を考慮する

SIEMとSOARを導入する際には、運用負荷とコスト管理のバランスを考慮することが不可欠です。

SIEMとSOARは、インシデント検出から対応までのプロセスを自動化・効率化するためのソリューションですが、その導入と運用には一定のコストが発生します。また、運用が複雑すぎるとセキュリティチームに過度な負担がかかり、逆に業務効率が低下する可能性もあります。

そこで、導入前にはコストの見積もりや運用負荷のシミュレーションを行い、組織に合った規模や仕様を選定することが大切です。さらに、クラウド対応のSIEM/SOARを利用することで、初期費用を抑えつつ運用負荷の軽減が可能です。

既存環境との連携が可能か確認する

SIEMとSOARを導入する際には、既存システムやセキュリティツールとの連携性を確認することが重要です。多くの企業では既に特定のセキュリティツールやクラウドシステムを運用しており、これらとSIEM/SOARが連携できるかが導入効果に大きく影響します。

特に、複数のセキュリティソリューションが混在する環境では、SIEMがログを統合して収集できることや、SOARが各ツールと自動で対応できることが求められます。

また、クラウドシステムを現在運用中、または今後移行予定の場合、クラウド対応のSIEM/SOARの選定が推奨されます。これにより、オンプレミスとクラウド双方に一貫したセキュリティ対策が適用でき、運用の柔軟性が高まるでしょう。

HENNGE One Identity Editionとの連携

SIEMとSOARの導入時には、クラウド対応のシングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)を提供するHENNGE One Identity Editionとの連携が効果的です。

HENNGE One Identity EditionのSSO機能により、認証データが一元管理され、セキュリティレベルの高いアクセス管理が可能です。MFAは不正アクセスのリスクを低減し、クラウド環境でも安全な認証を維持します。

この連携により、認証情報やアクセスデータがSIEMに統合され、異常行動を即座に検知できるようになります。さらに、SOARと組み合わせることで、不正アクセス時にアカウントを即時ロックし、追加認証も自動で実行可能です。

HENNGE OneとSIEM/SOARの連携によるセキュリティ強化

HENNGE Oneは、SIEMとSOARと連携することでクラウド環境のセキュリティを包括的に強化します。SSOやMFAを活用して認証情報を統合し、異常検知から迅速なインシデント対応までをサポートします。

HENNGE Oneの概要

HENNGE Oneはクラウド環境でのセキュリティ管理を支援するプラットフォームで、SSOとMFAの機能を備えています

SSOにより、ユーザーは一度の認証で複数のクラウドアプリに安全にアクセスでき、業務効率とアクセス管理の一元化が可能です。MFA機能を組み合わせることで、不正アクセスのリスクが大幅に低減し、高いセキュリティレベルが確保されます。

また、アクセス制御や認証データの可視化機能により、リアルタイムで異常なログイン動作を把握可能です。これにより、管理者がクラウド環境のセキュリティを簡単に管理し、ポリシーを適用できる体制が整います。

SIEM/SOARとの連携

HENNGE Oneは、SIEMおよびSOARとの連携により認証データやアクセス情報を統合し、インシデント対応の迅速化や異常検知の精度向上を実現します。この連携により、より強固なセキュリティ体制が構築されます。

SIEMとの連携

HENNGE OneとSIEMを連携することで、認証データやアクセス情報がSIEMに統合され、不審な行動やアクセスを早期に発見できます

HENNGE OneのSSO機能により、複数クラウドサービスのログイン情報が一元化され、SIEMがリアルタイムで監視可能な環境が整います。その結果、通常のログインパターンからの逸脱を即座に検知し、早期対応が可能です。

また、HENNGE Oneが提供する認証ログは、SIEM内で過去の履歴と照合され、不審なアクセス傾向を把握するための貴重なデータとなります。情報の可視化と分析により、クラウドセキュリティが強化され、インシデントリスクが低減されます。

SOARとの連携

HENNGE OneとSOARを連携することで、インシデント対応が自動化され、迅速なセキュリティ対策が可能です例えば、不正ログインが検出されると、SOARはHENNGE Oneの情報をもとに、MFAの再要求やアカウントの一時ロックを自動で実行し、被害拡大を防ぎます。

また、HENNGE Oneの認証情報により、SOARは過去のインシデント対応パターンを参照して対応プロセスを自動化しやすくなります。これにより、セキュリティ運用の効率が高まり、チームが本来の業務に集中できる環境が整備され、クラウドでの迅速な対応が可能となります。クラウド環境での対応も強化されるでしょう。

クラウドセキュリティの強化

HENNGE Oneを活用することで、クラウド環境におけるアクセス管理が一元化され、セキュリティの可視化とリスク対応が向上します。特に、SSOとMFA機能によりアクセス権限が統制され、アクセス管理が強化されるため、不正アクセスや異常行動の迅速な検出が可能です。

また、統合されたセキュリティポリシーがクラウド環境全体に適用されることで、組織全体で一貫したセキュリティ管理が実現します。これにより、クラウド環境の複雑化にも対応できる堅牢なセキュリティ体制が構築されるでしょう。

まとめ

SIEMとSOARは、現代の企業が直面する高度なセキュリティ課題に対して強力な支援を提供します。SIEMはリアルタイム監視や異常検知に優れ、SOARはインシデント対応の自動化と効率化を可能にするため、それぞれが異なる役割でセキュリティを支えます。

さらに、HENNGE Oneとの連携により、アクセス管理や認証情報の一元化、インシデント対応の迅速化が実現し、クラウド環境におけるセキュリティが一層強化されます。

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