EDRとは?
専門家不在でも導入できる?運用負荷を抑え、被害を防ぐ4つの重要機能
近年、サイバー攻撃の高度化により、「侵入を防ぐ」ことだけを前提とした従来の境界防御だけでは十分ではなくなっています。実際、令和7年のランサムウェア被害件数は226件(※)と高水準で推移しています。
このような傾向から、多くの企業ではEPP(Endpoint Protection Platform | エンドポイントセキュリティ対策)を導入し、マルウェア対策などのエンドポイント防御を行っています。
しかしながら、EPPによる対策のみに依存しており、複数の防御・検知・対応の仕組みを組み合わせた「多層防御」ができていない企業が大半です。こうした背景から、EPPとセットで導入することで多層的なエンドポイントセキュリティを実現できるEDR(Endpoint Detection and Response | エンドポイントでの検知と対応)が注目されています。
EDRはエンドポイントの挙動を継続的に監視し、不審な活動を検知・対応することで、被害の拡大を防ぐ仕組みです。本記事では、EDRの基本的な仕組みやEPPとの違い、製品選定のポイントを解説します。
※出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(P10)
目次
EDRとは?基本をわかりやすく解説
多くの企業ではエンドポイントセキュリティの一環としてEPPを導入しています。しかし、標的型攻撃やランサムウェアなどの巧妙な攻撃を完全に防ぐことは難しいのが現状です。
こうした背景から注目されているのがEDRです。EDRはエンドポイントの挙動を継続的に監視し、不審な活動を検知して迅速に対応するセキュリティ対策であり、侵入後の攻撃活動を早期に把握して被害の拡大を防ぐ役割を担います。
本章では、EDRの基本的な仕組みや役割、EPPとの違い、そして今注目されている理由について解説します。
EDR(Endpoint Detection and Response)の定義
EDRは、エンドポイントの挙動を継続的に監視し、不審な活動を検知して迅速に対応するセキュリティソリューションです。具体的には、PCやサーバーなどのログや挙動を分析し、マルウェア感染や不正アクセスなどの兆候を検知する役割を持っています。
プロセス実行や通信、ファイル操作などの挙動を記録・分析することで、異常な振る舞いを検出する仕組みです。さらに、感染端末の隔離や不正プロセスの停止などを行い、被害の拡大を防ぎます。このように、EDRは侵入を完全に防ぐのではなく、「侵入後の検知と対応」を目的とするセキュリティ対策です。
EPP(Endpoint Protection Platform)との違い
EPPは、マルウェアの侵入を未然に防ぐ「侵入前の防御」を目的としたエンドポイントセキュリティ製品です。一方で、EDRは侵入後の挙動を監視し、攻撃の兆候を検知して対応する「侵入後の検知と対応」を担います。
たとえるなら、EPPは「家の入り口を見張る門番」、EDRは「家の中を巡回する警備員」のような役割といえます。また、検知対象についても違いがあり、EPPは既知の脅威への対策が中心であるのに対し、EDRは機械学習の技術(振る舞い検知)により、従来の対策では検知が難しい未知の脅威にも対応可能です。
役割が異なる両者を組み合わせて活用することで、より強固なセキュリティを実現できます。
EDRの重要性
なぜ今、EDRが注目されているのか
EDRが注目されている背景には、サイバー攻撃手法の高度化があります。近年、未知のマルウェアやファイルレス攻撃、正規ツールを悪用した攻撃など、従来の防御を回避する手法が増加しています。
標的型攻撃やランサムウェアでは、侵入後にネットワーク内を横断しながら権限を拡大し、重要データへアクセスするケースが多く見られます。また、窃取したデータの暴露を盾に水面下で脅迫を行う、あるいは侵入自体を隠蔽し続けるノーウェアランサム(データ暗号化はせず、「窃取データを公開する」と脅し、金銭を要求する手法)の攻撃も報告されています。
そのため、侵入防止だけでなく、侵入後の不審な挙動を早期に検知する対策が重要となっています。
加えて、境界防御に依存しないゼロトラストの考え方が普及したことも要因です。端末側の挙動を可視化し、迅速な対応を可能にするEDRは、エンドポイントセキュリティ強化の要として多くの企業で導入検討が進んでいます。
EDRでできること:4つの主要機能
EDRは、エンドポイントの挙動(プロセス、ファイル操作、ログイン、通信など)を継続的に監視・分析し、通常とは異なる不審な動きを検知します。これにより、従来型の対策では発見が難しい、未知のマルウェアやファイルレス攻撃などの検知が可能です。
攻撃を検知したあとは、端末の隔離やプロセス停止などの対応を行うことで、被害の拡大を防げます。また、ログ分析を通じて攻撃経路や影響範囲を調査できるため、インシデント対応の支援にもつながります。
エンドポイントの監視
PCやサーバーで実行されるプロセスやファイル操作、ユーザーログイン、ネットワーク通信などの情報を収集し、端末の挙動を詳細に記録します。これにより、端末の挙動を継続的に把握できるようになり、通常とは異なる不審な動きの早期検知が可能です。
また、インシデント発生時には、蓄積されたログをもとに攻撃経路や影響範囲を正確に調査できます。エンドポイントは攻撃の侵入口になりやすいため、端末の状態を常に可視化しておくことは、現代のセキュリティにおいて極めて重要です。
不審な挙動の検知
EDRは、収集したエンドポイントの情報を分析し、攻撃の兆候となる挙動を検知します。具体的には、通常とは異なるプロセスの実行、不審な通信、権限昇格の試みなどが対象です。
また、近年では、Windowsに標準搭載されているPowerShellやコマンドプロンプトなどの管理ツールを悪用する「Living off the Land」と呼ばれる攻撃手法が増加しています。
これらは本来、システム管理や運用のために使われるWindowsの機能ですが、攻撃者はこれらを利用して不正な操作を行います。
このような攻撃は、不審なファイルをダウンロードせずに実行されるケースも多く、従来のマルウェア検知では発見が難しいという特徴があります。
EDRは端末全体の挙動を継続的に監視・分析することで、こういった不審な操作や異常な振る舞いを検知し、未知のマルウェアやファイルレス攻撃といった高度な脅威にも対応します。
迅速な封じ込め対応
EDRの大きな特徴は、攻撃を検知したあとに迅速な対応が可能な点です。具体的には、不審な挙動が検知された端末を即座にネットワークから隔離したり、悪意のあるプロセスを停止したりすることで、被害の拡大を防ぎます。
また、攻撃の痕跡をリアルタイムで追跡できるため、影響を受けた端末や攻撃経路の特定も迅速に行えます。このように、検知にとどまらず、被害を最小化するための実効的なアクションまで支援することが、EDRの重要な役割です。
原因究明のためのフォレンジック対応
フォレンジックとは、セキュリティインシデント発生後に原因を究明するための解析調査です。攻撃者がどこから侵入し、どのシステムやデータにアクセスしたのかを時系列で特定します。
EDRに記録された詳細なログは、この調査において不可欠な証拠となります。調査結果をもとに、同様のインシデントの再発を防止するための対策を検討できるため、恒久的なセキュリティレベルの向上へとつなげることが可能です。
EDR製品を選定する際の5つのポイント
EDRは多くのセキュリティベンダーから提供されており、機能や運用方法、サポート体制は製品ごとに異なります。そのため、自社のセキュリティ体制や運用リソースに適した製品を選定することが重要です。
特に中小・中堅企業においては、セキュリティ専任の人材が限られている場合が多く見られます。こうした状況を踏まえると、機能の豊富さだけでなく、運用のしやすさやサポート体制も重要な判断基準となります。
検知精度
EDR製品を選定するうえで不可欠な要素の一つが、脅威の検知精度です。EDRは端末の挙動を分析して攻撃の兆候を検知する仕組みであるため、不審な挙動をどれだけ正確に特定できるかがセキュリティ効果を左右します。検知精度が不十分な場合、本来防ぐべき攻撃を見逃してしまうリスクが生じます。
一方で、誤検知が多すぎる場合にはアラート対応に追われ、運用担当者の負担増大につながりかねません。そのため、AIや振る舞い分析などの技術を活用し、高い検知精度を実現している製品を選ぶことが重要です。また、第三者機関による評価や実績、導入事例などを参考にすることで、客観的な検知能力を比較しやすくなります。
自動対応機能
EDR製品のなかには、脅威検知時に自動的な対処を行う機能を備えたものがあります。例えば、感染が疑われる端末のネットワーク隔離や、悪意のあるプロセスの強制停止などを自動実行することが可能です。これにより、インシデント発生時の初動対応を迅速化できます。
こうした自動化は運用担当者の負担軽減に直結し、限られた人員で対策を講じる企業にとって大きなメリットとなります。ただし、自動対応の範囲や設定方法は製品ごとに差があるため、自社の運用ポリシーにあわせて柔軟にカスタマイズできるかを確認しておくことが重要です。
既存環境との連携・拡張性
製品選定においては、既存のセキュリティ環境との連携性と将来的な拡張性が重要な判断基準です。特に限られた人員で運用する企業では、EPPやSIEM(Security Information and Event Management | セキュリティ情報とイベント管理)と連携し、ログやアラートを一元管理できるかが運用負荷に直結します。
さらに、MDRサービスとの連携も重要な観点です。将来的に運用を外部委託する可能性がある場合には、MDRと親和性の高い製品を選定しておくことで、追加の構築負荷を抑えつつスムーズな移行が可能です。特に「ひとり情シス」のようにリソースが限られている環境では、導入時点から運用まで見据えた設計が不可欠と言えるでしょう。
サポート体制
EDRの運用では専門的な知識を要する場面が多いため、ベンダーのサポート体制は重要な選定ポイントです。導入支援から日常の運用サポート、緊急時のトラブル対応まで、支援内容がどの程度充実しているかを精査しなければなりません。
具体的には、日本語によるサポートの有無、問い合わせ対応時間、技術サポートのレベルなどが判断材料となります。セキュリティインシデントは迅速な対応が求められるため、緊急時に適切なアドバイスや支援を受けられる体制が整っているかを確認しましょう。
投資対効果(ROI)の検討
EDRの導入を検討する際は、投資対効果(ROI)の視点も欠かせません。一般的にEDRは導入コストが高いと考えられがちですが、万が一インシデントが発生した際の調査・復旧費用は、数千万円規模に達する可能性があります。
EDRによって攻撃を早期に発見・封じ込めができれば、被害の拡大や二次的な調査コストを大幅に抑えることが可能です。EDRを単なるコストとしてではなく、事後対応にかかる莫大な費用を削減するための投資として捉えることが重要です。
EDR導入後に直面しやすい4つの課題
EDRの導入だけでは、エンドポイントセキュリティに十分な効果を発揮できるとは限らないのが落とし穴です。 ここではEDRの導入後に注意したい課題を4つの観点で紹介します。
運用負荷が高い
EDRはエンドポイントの挙動を詳細に監視し、膨大なログやイベントを収集する仕組みです。そのため、運用担当者はアラートの確認やログ分析、インシデント調査などを日常的に行う必要があります。
特に、情報システム部門のリソースが限られている中小企業では、セキュリティ専任の担当者を配置できないケースも少なくありません。その結果、本来の業務の傍らでアラート対応や調査に多くの時間を割くことになり、本来注力すべきIT戦略の策定やDX推進といった業務に支障をきたすおそれがあります。
このような運用負荷を軽減するためには、検知後の対応手順を策定して判断を定型化したり、アラートの優先順位付けを行ったりするなど、効率的な運用方法を事前に検討しておくことが重要です。
アラートが多すぎる
EDR導入後に直面する代表的な課題の一つが、通知されるアラートの多さです。EDRは端末のわずかな挙動の変化も逃さず監視しているため、不審な可能性のあるイベントが発生するとアラートを通知しますが、それらすべてが実際のサイバー攻撃であるとは限りません。
例えば、業務で利用している独自開発のツールや、正規のシステムアップデートが不審な動きとして検知される「誤検知」が発生する場合もあります。こうした状況で大量のアラートが届き続けると、担当者が本当に重要なアラートを見逃してしまうリスクが高まります。
このような事態を防ぐためには、導入後にアラートのチューニングを行い、不要なアラートを減らすことが重要です。さらに、一度設定して終わりではなく、環境の変化にあわせて継続的に調整していくことで、実効性の高い監視体制を構築できます。
インシデント対応の手順見直し
EDRによって攻撃の兆候を検知できたとしても、対応手順が明確でなければ迅速な対処は困難です。例えば、感染端末の隔離やネットワーク遮断の実施方法、判断を行う担当者などのルールが定まっていない場合、初動対応が遅れ、被害が拡大するリスクがあります。
そのため、EDRの導入にあわせてインシデント対応の手順や役割分担を見直すことが重要です。具体的には、アラート発生時の対応フローやエスカレーションルールを整理し、関係部署間で共有しておく必要があります。
こうした体制をあらかじめ構築しておくことで、インシデント発生時にも迅速な対応が可能になります。
専門人材が不足している
EDRを効果的に活用するためには、セキュリティ知識やログ分析スキルを持つ専門人材が必要です。しかし、多くの企業ではセキュリティ専門人材が不足しており、EDRを導入しても機能を十分に使いこなせないケースが見受けられます。
特に中小企業では、情報システム担当者がほかの業務を兼務していることが多く、24時間365日の監視や高度な分析にリソースを割くことは容易ではありません。このような課題への対策としては、外部の専門サービスを活用する方法が有効です。
まとめ
EPPはマルウェア感染を未然に防ぐ重要な防御策ですが、すべての攻撃を完全に阻止することは困難です。そのため、侵入後の挙動をいち早く察知し、被害の拡大を防ぐEDRの重要性が高まっています。
EDRを導入することで、エンドポイントの挙動を可視化し、不審な活動の早期検知や迅速な封じ込め対応が可能になります。一方で、運用負荷や人材不足といった課題もあるため、自社の運用体制に合った製品選定やサポート体制の確保が重要です。
こうした「運用の壁」をクリアし、セキュリティ専任担当者がいなくても高度な対策を可能にするのが、外部の監視・対応代行サービスです。「HENNGE Endpoint & Managed Security」は、人手不足の情報システム部門でも高度なエンドポイントセキュリティを実現できるマネージドサービスで、EDRの導入で高まる運用負荷の課題を解決できる点がメリットです。EDRを検討しているものの運用体制の維持に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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詳しくは、HENNGE One エンドポイントセキュリティ ページをご参照ください。
